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インチキ評論家に乗っ取られる番組

2003430

宇佐美 保

 朝日ニュースターで放映される番組「パックインジャーナル」は、簡単にインチキ評論家に乗っ取られます。

先週の放送でも、インチキ経済評論家(紺谷典子氏)の言いたい放題でした。

“歴代の内閣で株価を一番下げたのは、小泉内閣だ!”

と小泉首相を非難していながら、紺谷氏次のように宣うのです。

(紺谷氏の御神託:1

或るシンクタンクの試算では、「日本のGDPは、今は500兆円しかないけど、アメリカとかヨーロッパの経済政策をとっていたら、(仮にバブルが破裂しても)700兆円は超えていた」、又、税収は40兆円そこそこしかないんですけど、90兆円はこえていた」と言うんですよ。

如何に経済運営を間違っていたかと言うんですよね。

 更には次のように宣います。

(紺谷氏の御神託:2

 国債を600兆円以上発行していながら、殆どは、税収不足を補う為に使用し、景気対策に使った金額は60兆円程なのです。

ですから、景気対策をちゃんとやっていれば、そんな税収不足にはならないで済んでいたんですよ。

 

 この紺谷氏の御神託に対して、番組出席者は誰一人として異論を挟みませんでした。

おかしくはありませんか?

紺谷氏の御神託:1は、当然バブル崩壊前の政権が実施していなくてはならなかった経済政策です。

御神託:2も殆ど小泉首相以前の景気対策の問題ではありませんか!?

しかし、紺谷氏が森内閣以前の経済対策を非難した事を一度も聞いた事もありませんし、況わんや、紺谷氏から、“日本も欧米同様な経済対策をすべきだ”との発言を聞いたこともありません。

 

紺谷氏は小泉内閣誕生以前(少なくも2万円を少し割る位までは)は、番組中で、常に“株価は直に上昇し回復する”と宣い続けていたのです。

 

紺谷氏の欧米の経済対策はどんな内容なのかを、番組中でどなたも質問されませんでした。

何故でしょうか?

又本当に、その欧米の対策とやらは如何なる対策なのでしょうか?

 

 私が参考に出来るのは、拙文“日本の株価は未だ高い”にも引用させて頂きましたが、931月から2002年まで米上院予算委員会で補佐官(国家公務員)として勤務され、現在、経済産業研究所研究員の中林美恵子氏が、“米国の財政再建から日本が学ぶこと”との次のような解説記事(「論座2002.9」)です。

 筆者は今年春まで十年近く、米国議会でスタッフとして働いたが、米国はこの間、経済の持続的成長と財政再建の両方を達成した。一方、日本の過去十年を振り返ると、景気刺激のために歳出を増やしても効果が薄かつたことは明らかだ

米上院予算委員会での公聴会や上院本会議でも、財政政策が景気回復に無力だと主張する場面では、しつこいほど日本の例が引き合いに出されたものだ

 どの国であれ、あらゆる政策問題は財政に置き換えることができる。高齢化社会、年金、医療、環境、安全保障、海外援助、金融、福祉、教育、犯罪対策、地方分権など政策の諸問題は、予算が必要なものがほとんどであり、財政と直結する。言い換えれば、予算を配分するにせよ削減するにせよ、財政とは国家のあり方を描く作業なのだ。日本の財政赤字は先進国中で最悪の水準にある。こうした状況がいつまでも続くと、政府は手足を縛られ、本当に必要とする政策を実行できなくなる恐れがある。

 米国だけでなく、財政バランスの健全化に成功した国は景気回復も実現させている。現実を見ても財政再建と景気回復は二律背反ではない。日本も両方を同時に解決することは不可能ではないはずだ。……            (下線赤字処理は私が施しました)

 如何でしょうか?

この中林氏によって紹介されたアメリカの経済対策なるものは、「財政バランスの健全化」であって、紺谷氏の支持される「赤字国債を乱発する政策」とは全く反対ではありませんか。

 

 こんないい加減な紺谷氏を巫女の如くに敬う司会の愛川氏は、次なる紺谷氏の御神託で又喜びます。

御神託:3

財務省は自分たちの財政政策の失敗(税収も2/3になってしまった)を日銀に転嫁して「インフレターゲット」とか言っているけど、そんな彼等にその責任をキチンと取って貰うべきである。

経済が悪くなった原因は、株価と地価の下落である。この対策をどうするのか?

金利を下げても良くならない。将来不安ですよね。これをどうするか?

 こんなデタラメな発言にも愛川氏は異論を挟みません。

おかしくはありませんか?

この番組に登場するもう一人のインチキ評論家の森永卓郎氏が「インフレターゲット待望論」を吹聴した際は、愛川氏は“森永さん、竹中さんの代わりに大臣をやって下さいよ”とはしゃいでいたのです。

 

 相変わらずインチキ評論家達は「株価、地価の下落が大問題」と喚きますが、拙文で何度も書いていますが、日本の株価地価は未だ未だ下落して、本来の価格へと落ち着くべきなのです。

確かに、「株価、地価の下落」によって、銀行企業は、手持ちの株土地の価値が低下して帳簿上の赤字が増大して苦しみます。

だからといって、「時価会計」を棚上げせよと言うのでは、単なる問題の先送りです。

そもそも、銀行企業が、持ち合い株と言って他社の株を抱え込んだり、資産運用で土地を抱え込むとの日本企業の悪癖を脱皮することこそが急務ではありませんか!?

 

 ところが紺谷氏は“平常時と非常時とでは、対策の取り方が異なるべきで、この非常時に急激な改革を行うべきではない”と発言するや、司会の愛川氏は“不良債権を一時棚上げすべきでは?”と言い、紺谷氏の同意を取り付けます。

一人、草薙厚子氏だけは“その際は少なくとも銀行幹部の責任を追及すべき”と発言しますが、紺谷氏はじめ誰もが彼女の発言を無視していました。

アメリカの銀行改革では、多くの銀行幹部を刑務所に送り、不良債権処理を一挙に行ったのでは?

 

 そして、日本人の誰もが感服した、瀕死の日産に対してのゴーン社長の改革は電光石火の早業ではありませんでしたか!?

(それでも愛川氏は、かって、“村山工場が閉鎖された為にその町が寂れてしまった”と非難されていました)

日産の改革をゆっくりやっていたら、銀行株などを多量に抱え込んだままでしたでしょう。そして、その値下がりで、日産も他企業同様に苦しみ、その工場の町もその日産の恩恵にはあずかれない状態のままでしょう。

 

 そして、不良債権問題を棚上げしても、赤字企業は銀行からの借入金の利息を払えるのですか?又、今後その企業は銀行からの借り入れなくして活動出来るのですか?

バブルがはじけて市場(パイ)は縮小し手居るのです。

その上、今や私達の身の回りでは、「日本製品」は影を潜め、低賃金に支えられた「アジア、中国製品」が溢れ、更に、パイは縮小しているのです。

日本は、産業構造の変革を突き付けられているのです。

なのにのんびりと全ての問題を先送りしていては、今度は日本が、アジアの諸国から取り残されるでしょう。

(勿論、そういう事態(戦後の日本のような状態)になっても、“みんな貧乏なら貧乏も怖くない”で、それなりに苦しいながらも、それなりに楽しい生活もありましょうが)

 

 更に、紺谷氏は“年金も保険も赤字ではない!”と発言しました。

草薙氏は“そんなことはない”と反論しましたが、紺谷氏は毎度の事ながら“年金も保険も赤字ではない”という大問題を提示する場合でもデータを提示することはないのです。

単に、“役人から聞いた”の伝聞情報だけなのです。

こんな方が評論家ですか?
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